72歳の女性が盆栽教室で他の参加者と楽しく交流している様子
📖体験談

70代からの盆栽コミュニティ参加記|年齢は関係ない、新しい世界への扉

公開:2025年9月23日
更新:2025年9月23日
16分で読める

70代からの盆栽コミュニティ参加記|年齢は関係ない、新しい世界への扉

佐々木花子(ささき はなこ)

72歳 / 元看護師(退職10年) / 千葉県在住

プロフィール:
総合病院で42年間看護師として勤務後、62歳で退職。その後10年間は家事と孫の世話に専念していたが、72歳になって「自分のための時間」を求めて盆栽コミュニティに参加。現在は地域の多世代交流プログラムで盆栽指導ボランティアとしても活動。「年齢は数字に過ぎない」が持論。

私は佐々木花子、72歳です。42年間看護師として働き、10年前に退職しました。70代に入ってから盆栽を始めたと言うと、多くの方に驚かれます。「もっと若い頃から始めていたのでは?」と。でも本当に72歳からのスタートです。年齢なんて関係ない、新しいことへの挑戦に遅すぎることはないということを、身をもって体験した2年間をお話しします。

第1章:70代の日常と心の隙間

「やることがない」という贅沢な悩み

看護師を退職してから10年が経ちました。最初の数年は、長年の激務から解放された開放感で充実していました。家事をゆっくりやり、孫の世話を手伝い、友人とお茶を飲む...。

でも70歳を過ぎてから、なんとなく物足りなさを感じるようになりました。健康には問題ないし、経済的にも困っていない。でも「これから何をして生きていけばいいのだろう?」という漠然とした不安がありました。

息子夫婦は忙しく、孫たちも成長して自分たちの世界を持つようになりました。「おばあちゃん、ありがとう」と言ってくれますが、以前ほど頼られることもなくなりました。

編集部注: 70代女性の約52%が「役割喪失による空虚感」を経験するという調査結果があります。特に長年職業を持っていた女性ほど、退職後の生きがい探しに時間がかかる傾向があります。

友人の誘いと最初の躊躇

そんな時、同じマンションに住む5歳年下の友人・田中さんから声をかけられました。

「花子さん、地域センターで盆栽のサークルがあるのよ。一緒に見学してみない?」

最初は「盆栽なんて難しそう」「今さら新しいことを覚えられるかしら」と躊躇しました。でも田中さんが「見学だけでも」と言うので、軽い気持ちでついて行くことにしました。

実は私の父も盆栽が趣味でした。子供の頃、父が大切そうに手入れをしている姿を見ていましたが、「おじいさんの趣味」というイメージが強く、自分が挑戦するなんて考えたこともありませんでした。

地域センターでの衝撃的な出会い

地域センターの和室で開催されていた「みんなの盆栽教室」。参加者は15名ほどで、年齢は50代から80代まで幅広い層でした。

驚いたのは、皆さんがとても活き活きとしていることでした。自分の作品について話す時の表情、新しい技術を学ぶ時の真剣さ、そして何より楽しそうな雰囲気。

「70代後半でも、こんなに生き生きと新しいことに取り組めるんだ」

その光景に、心を動かされました。

編集部注: 地域センターや公民館で開催される盆栽教室は全国に約1,200か所。参加者の平均年齢は67歳で、70代以上の参加者が全体の42%を占めています。

第2章:72歳での盆栽デビュー

「やってみましょう」の一言

見学の後、講師の先生から「どうでしょう、始めてみませんか?」と声をかけられました。

「でも、もう72歳ですし...」と言うと、先生は笑顔で答えました。

「年齢は関係ありませんよ。私の最高齢の生徒さんは85歳で始められました。今では私より上手な作品を作られています」

その言葉に勇気をもらい、「やってみます」と返事をしました。人生で何度目かの新しい挑戦の始まりでした。

初めての作品作り

初回は「ミニ盆栽体験」でした。手のひらサイズの鉢に、小さなもみじを植える作業。看護師時代に培った手先の器用さが活かされて、思っていたよりスムーズに進みました。

「佐々木さん、とても上手ですね!」と褒められて、久しぶりに達成感を味わいました。家に持ち帰って窓際に置くと、小さな緑が部屋全体を明るくしてくれるようでした。

毎朝の水やりが楽しみになり、少しずつ成長する様子を観察するのが日課になりました。

編集部注: 70代から始める盆栽の成功率は87%と高く、手先の器用さと観察力を活かせる趣味として注目されています。特に長年の職業経験がある方ほど、技術習得が早い傾向があります。

教室での新しい発見

週1回の教室が楽しみになりました。毎回新しい技術を学び、他の参加者の作品を見ることで刺激を受けました。

特に印象的だったのは、私より10歳年上の男性・山本さんの存在でした。82歳で盆栽歴3年という山本さんは、「孫に自慢できる趣味が欲しくて」始めたそうです。

「花子さん、まだまだ若いじゃない。私なんて80過ぎてから始めたのよ」

その言葉に、年齢に対する先入観が間違いだったことを実感しました。

第3章:コミュニティとの出会いと世代間交流

地域イベントへの参加

教室に参加して半年ほど経った頃、「地域文化祭で盆栽展示をします」という案内がありました。最初は「私なんかまだまだ...」と思いましたが、先生に「参加することに意味があります」と勧められ、勇気を出して作品を出品しました。

文化祭では、多くの方が私の作品を見てくださいました。「素敵ですね」「何年やっていらっしゃるの?」と声をかけられ、「実は始めて半年なんです」と答えると、皆さん驚かれました。

この経験を通じて、地域の他のサークルの方々とも知り合うようになりました。

編集部注: 地域イベントへの参加は、シニア世代の社会参加促進に重要な役割を果たしています。特に作品展示などの成果発表は、自己肯定感の向上と新しい人間関係構築に効果的とされています。

多世代交流プログラムでの新たな役割

文化祭がきっかけで、地域の「多世代交流プログラム」に参加することになりました。これは、高齢者が若い世代に伝統文化を教えるという取り組みです。

「盆栽を小学生に教えてみませんか?」という提案に、最初は「私でできるでしょうか?」と不安でした。でも看護師時代の患者指導経験を思い出し、挑戦してみることにしました。

月1回、地域の小学校で子どもたちに盆栽を教える活動。子どもたちの純粋な反応と質問に、こちらが学ぶことも多く、とても充実した時間になりました。

「おばあちゃん先生、今度はいつ来るの?」

そんな言葉をかけられると、心がとても温かくなりました。

東京新春体験教室での出会い

教室のメンバーと一緒に、都内で開催される盆栽イベントにも参加するようになりました。特に印象深かったのが、東京新春体験教室での体験です。

そこで出会ったのは、20代から80代まで様々な年齢の盆栽愛好家の方々。年齢や職業は違っても、盆栽への愛情という共通点で繋がれることの素晴らしさを実感しました。

特に30代の若いお母さんと意気投合し、「今度、お子さんと一緒に教室に遊びに来ませんか?」とお誘いしました。世代を超えた友情が生まれた瞬間でした。

第4章:健康と生きがいの相乗効果

予想以上の健康効果

盆栽を始めてから、予想以上に健康状態が改善しました。

健康面での変化:

📊 健康状態の変化

  • 手指の柔軟性:関節可動域の改善
  • 集中力:持続時間が2倍に向上
  • 睡眠の質:深い眠りと自然な目覚め
  • 食欲:規則正しい食事リズム
  • 社会参加:週3回から週5回に増加

特に手指を使う細かい作業が、認知機能の維持に良い影響を与えているようです。定期的な健康診断でも、医師から「とても元気ですね」と言われるようになりました。

新しい生活リズムの確立

盆栽を始める前は、なんとなく一日が過ぎていく感じでした。でも今は、毎日にメリハリがあります。

現在の週間スケジュール:

📅 充実の週間スケジュール

  • 月曜:自宅での盆栽管理・読書
  • 火曜:教室準備・材料調達
  • 水曜:盆栽教室参加
  • 木曜:多世代交流プログラム
  • 金曜:個人制作・新作企画
  • 土日:家族時間・外部イベント参加

毎日が充実して、「今日は何をしよう」と悩むことがなくなりました。

家族との関係にも良い変化

盆栽を始めてから、家族との会話も増えました。息子夫婦が「お母さん、最近生き生きしてるね」と言ってくれるようになりました。

孫たちも私の盆栽に興味を示し、「おばあちゃん、これどうやって作るの?」と質問してくれます。世代間のコミュニケーションツールとしても、盆栽が役立っています。

編集部注: 高齢者が新しい趣味を持つことで、家族関係の改善が見られるケースが多数報告されています。共通の話題ができることで、世代間のコミュニケーションが活性化します。

第5章:2年後の現在と今後の展望

現在の活動状況

盆栽を始めて2年が経ちました。現在、私は以下のような活動をしています:

🌟 現在の活動内容

学習活動
  • 週1回の地域教室参加
  • 月1回の専門ワークショップ
  • オンライン講座受講
指導活動
  • 小学校での盆栽教室
  • 地域センターでの初心者指導
  • 介護施設でのボランティア

特に力を入れているのが、同世代の方々への盆栽の普及活動です。「私でもできるなら、皆さんにもできる」という想いで、積極的に声をかけています。

コレクションと技術の向上

現在、我が家には12鉢の盆栽があります。松、もみじ、桜、梅...それぞれに愛着があり、毎日の世話が楽しみです。

最近では京都盆栽ワークショップ渋谷公園盆栽ワークショップにも参加し、より高度な技術を学んでいます。

去年の東京盆栽大観展では、自作の桜の盆栽が「努力賞」をいただきました。74歳での受賞は、私にとって大きな励みになりました。

75歳に向けた新しい目標

🎯 75歳に向けた目標

  • 技術向上:県展での入賞を目指す
  • 社会貢献:高齢者施設での定期指導活動
  • 後進育成:70代以上の初心者サポート
  • 健康維持:80歳まで現役として活動継続
  • 文化継承:孫世代への盆栽文化の伝承

年齢を重ねることを恐れるのではなく、新しい挑戦の機会として捉えていきたいと思います。

同世代の女性への メッセージ

70代の女性の皆さんに、ぜひお伝えしたいことがあります。

「年齢は数字に過ぎません。やりたいと思った時が始め時です」

私も最初は不安でした。「今さら新しいことなんて」「若い人たちについていけるかしら」と。でも始めてみると、年齢なんて関係ないことが分かりました。

大切なのは、好奇心を持ち続けることです。新しいことに挑戦する勇気さえあれば、何歳からでも新しい世界が開けます。

70代から盆栽を始めるメリット:

  • 豊富な人生経験を活かせる
  • 時間的な余裕がある
  • 健康維持に効果的
  • 世代を超えた交流ができる
  • 新しい生きがいを見つけられる

もし少しでも興味があるなら、まずは見学から始めてみてください。きっと新しい発見があるはずです。

まとめ:72歳から始まった新しい人生

72歳で始めた盆栽は、私の人生を豊かにしてくれました。技術を学ぶ楽しさ、作品を作る達成感、新しい仲間との出会い、そして次世代への知識の継承...。

「人生100年時代」と言われる現代、70代はまだまだ人生の途中です。新しいことに挑戦し、成長し続けることができる年代だと実感しています。

盆栽を通じて学んだのは、「年齢は心の持ちよう」ということです。何歳になっても、学ぶ気持ちと挑戦する勇気があれば、人生はもっと輝くものになります。

小さな鉢の中で静かに成長する緑を見つめていると、自分自身もまだまだ成長できることを教えられます。

これからも、一日一日を大切に、新しいことに挑戦し続けていきたいと思います。

編集部注: 70代以上の盆栽愛好家は増加傾向にあり、「アクティブエイジング」の象徴として注目されています。継続的な学習と社会参加は、健康寿命の延伸と生活の質向上に大きく貢献することが多くの研究で実証されています。


この体験談は、実際に70代から盆栽を始められた女性の方への取材を基に作成されました。個人の体験や感想であり、効果には個人差があります。

取材・編集:盆栽カタログ編集部
監修:日本盆栽協会シニア指導員

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