盆栽初心者の愛好会体験記｜不安だらけの初参加から1年後の変化

「盆栽愛好会に参加してみたいけれど、初心者の自分が行っても大丈夫だろうか？」

まずは自己紹介から

コロナ禍で在宅勤務が増えた2023年春、ベランダに置いた小さなミニ盆栽から始まった私の盆栽ライフ。独学の限界を感じ始めた頃、地域の盆栽愛好会の存在を知りました。しかし、参加への一歩を踏み出すまでには2ヶ月もの葛藤がありました。

あれから1年が経ち、今では新しく参加される方のお手伝いをするまでに。この記事では、当時45歳の会社員だった私が、不安だらけの初参加から現在までの体験を赤裸々にお伝えします。同じように参加を迷っている方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。

第1章：参加前の2ヶ月間 〜 不安との戦い

ネット検索から始まった長い悩み

最初に地域の盆栽愛好会を見つけたのは、2023年8月のことでした。「世田谷区 盆栽教室」で検索して見つけた小さなサイト。月に2回、土曜日の午前中に公民館で活動している「緑和会」という愛好会でした。

しかし、そのホームページを見た瞬間、私の頭の中は不安でいっぱいになりました。

私の当時の不安

• 「会員の皆さん、きっと60代70代の方ばかりよね...」
• 「盆栽歴3ヶ月の初心者が行っても迷惑じゃないかな」
• 「専門用語が分からなくて会話についていけない」
• 「手ぶらで行っていいの？道具は何を持参すれば？」
• 「月会費以外にも色々とお金がかかりそう」

2ヶ月間の情報収集

不安を解消しようと、私はあらゆる情報を集めました。

調べたこと

• 愛好会のブログ（更新が1年前で止まっていて余計不安に）
• 公民館の利用状況（土曜午前中は確かに盆栽関連で予約されている）
• 盆栽の基本用語をメモ帳に書き出し
• YouTubeで基本技術の予習
• 近所の盆栽園で「愛好会について」店主さんに質問

特に、近所の盆栽園での情報収集は有益でした。店主の山田さん（60代）は、「緑和会は初心者にとても優しいよ。会長の佐藤さんは元中学校の先生で、教えるのが上手なんだ」と教えてくれました。

それでも、なかなか参加への決心がつきませんでした。

背中を押してくれた出来事

転機となったのは、私のベランダの小品盆栽が病気になってしまったことでした。葉が黄色くなり、どうしていいか分からず、再び山田さんの店に駆け込みました。

「うーん、これは病気というより、水やりのタイミングと肥料の問題だね。独学だとこういう基本的なことを見落としがちなんだ。やっぱり最初はちゃんと教えてもらった方がいいよ」

山田さんの言葉で、独学の限界を痛感しました。そして、「緑和会の10月の例会は植え替えの実演があるから、今がチャンスだよ」と背中を押してくれたのです。

第2章：運命の初参加日 〜 2023年10月14日

緊張のあまり30分前に到着

当日の朝、私は緊張で6時に目が覚めました。愛好会の開始時刻は午前9時なのに、8時半には公民館の前に到着してしまいました。

持参したもの：

• 自分のミニ盆栽（直径10cmの小さな松）
• 盆栽用ハサミ（前日に慌てて購入）
• メモ帳とペン
• 1000円（会費として）

建物の前でうろうろしていると、大きな風呂敷包みを持った白髪の男性が声をかけてくれました。

「もしかして、盆栽の会の方ですか？」
「ええ、そうです。初めてお見えになるのですね。私は会長の佐藤です」

これが、佐藤会長（当時72歳）との最初の出会いでした。

予想を覆す温かい歓迎

会場に入ると、既に7名の方が準備をされていました。年齢層は確かに60代以上が中心でしたが、50代の女性や、なんと30代の男性もいらっしゃいました。

「今日は新しい仲間が来てくれました。田中さんです」

佐藤会長の紹介で、皆さんが温かく迎えてくださいました。自己紹介では緊張のあまり声が震えましたが、皆さん笑顔で聞いてくださいました。

印象的だった最初の会話

• 「盆栽歴はどのくらい？」「3ヶ月です...」「素晴らしい！若い時に始められて羨ましい」
• 「その松、とても良い素材ですね」「え、本当ですか？」「枝振りに将来性を感じます」
• 「分からないことは何でも聞いてくださいね」

初回の作業体験：植え替えの見学

その日のメインは、会員の方の五葉松の植え替え実演でした。佐藤会長の実演を間近で見ながら、丁寧な解説を聞くことができました。

学んだこと

• 根の切り方には理由がある
• 用土の配合の重要性
• 植え替え時期の判断方法
• 植え替え後の管理方法

私も自分の小さな松を見てもらい、「来年の春に植え替え時期ですね」とアドバイスをいただきました。

初回の小さな失敗

実演の後、皆さんが各自の作業を始められた時のことです。私は見学だけのつもりでしたが、「せっかくだから少し剪定してみましょう」と勧められました。

しかし、緊張のあまり手が震えて、切ってはいけない主要な枝を切ってしまったのです。

「あっ...」

一瞬、会場の空気が止まりました。私は顔が真っ赤になり、「すみません、すみません」と謝り続けました。

すると、隣にいた田村さん（68歳）が優しく言ってくださいました。

「大丈夫、大丈夫。私なんて最初の頃、主幹を切っちゃったことがあるの。それでも立派に復活したから、この程度なら全然問題ないわよ」

他の皆さんも「失敗は勉強のうち」「私たちも皆通った道よ」と慰めてくださいました。

帰り道の心境変化

初回参加を終えて帰る道すがら、私の心境は180度変わっていました。

参加前: 「場違いかも...迷惑かも...」
参加後: 「もっと学びたい！来月も絶対参加しよう！」

特に印象に残ったのは、帰り際に佐藤会長からいただいた言葉でした。

「田中さん、盆栽は急がなくていいんです。木と向き合う時間を大切にして、ゆっくり学んでください。我々はいつでもお手伝いしますから」

第3章：継続参加の決意 〜 1ヶ月目から3ヶ月目

2回目参加での発見

11月の2回目参加では、前月の緊張はだいぶ和らいでいました。今度は京都盆栽体験教室のような他のイベント情報も教えていただき、盆栽コミュニティの広がりを実感しました。

この回では、針金かけの基礎を教えていただきました。私の小さな松も、佐藤会長の指導のもと、人生初の針金かけに挑戦しました。

針金かけでの学び

• 針金の太さと枝の太さの関係
• 巻き方の角度（45度が基本）
• 力の入れ方のコツ
• 外すタイミングの重要性

最初はぎこちない手つきでしたが、皆さんの温かい指導のおかげで、なんとか形になりました。

3ヶ月目の転機：初めての成功体験

12月、参加から3ヶ月目に大きな転機が訪れました。盆栽ワークショップ in 芝公園に愛好会のメンバーと一緒に参加する機会をいただいたのです。

そこで、私の小さな松が講師の先生から「とても良い針金のかけ方ですね。どなたに習われましたか？」と褒められたのです。

「愛好会の会長に教えていただきました」と答えると、「基本がしっかりできていますね。良い指導者に恵まれましたね」とおっしゃっていただきました。

この時の嬉しさは今でも忘れません。3ヶ月前は針金かけという言葉も知らなかった自分が、プロの講師に褒められるなんて。

愛好会での人間関係の変化

3ヶ月間の参加で、愛好会の皆さんとの関係も深まりました。

田村さん（68歳・主婦）
最初に失敗を慰めてくれた方。園芸全般に詳しく、病気や害虫の対処法をたくさん教えてくださいました。

山本さん（65歳・元エンジニア）
几帳面な性格で、詳細な栽培記録をつけている方。科学的なアプローチでの管理方法を学びました。

高橋さん（52歳・自営業）
私に最も年齢の近い方で、仕事の話なども含めて親しくなりました。現代的な道具の使い方も教えてくださいました。

皆さんとの会話の中で、盆栽以外の話題でも盛り上がるようになり、愛好会が私にとって大切な居場所となりました。

第4章：スキルアップ期 〜 3ヶ月目から6ヶ月目

春の植え替えシーズンでの大挑戦

2024年4月、待ちに待った私の松の植え替え時期がやってきました。前年の10月に「来年の春に」と言われていた作業です。

この時期には新春盆栽体験教室なども多く開催され、愛好会以外のイベントにも積極的に参加するようになっていました。

植え替えでの学び

• 根の状態の判断方法
• 古い土の取り除き方
• 新しい用土の配合
• 植え替え後の水やり管理

佐藤会長の指導のもと、慎重に作業を進めました。根を切る時は手が震えましたが、「大丈夫、この根はもう役割を終えています」という言葉に励まされ、思い切って切ることができました。

初めての作品完成

6ヶ月目の5月、私にとって記念すべき出来事がありました。愛好会で「月例作品発表」があり、私も初めて自分の松を発表したのです。

購入時は手のひらサイズの素材でしたが、半年間の手入れで見違えるほど美しくなっていました。

発表時のコメント

• 「針金の効果がよく現れていますね」（佐藤会長）
• 「枝の配置がとても自然です」（田村さん）
• 「半年でここまで成長させるとは素晴らしい」（山本さん）

皆さんからの温かいコメントに、涙が出そうになりました。

新たな挑戦：2作品目の制作開始

1作品目の成功に自信を得た私は、2作品目の制作を始めることにしました。今度は雑木類のモミジに挑戦です。

樹種が変わると管理方法も大きく異なることを学びました。

松とモミジの違い

• 水やりの頻度
• 施肥のタイミング
• 剪定の時期
• 病害虫の種類

最初は戸惑いましたが、愛好会の皆さんが様々な樹種を育てているので、それぞれの専門知識を教えていただけるのが大きなメリットでした。

第5章：成長実感期 〜 6ヶ月目から1年

後輩指導の機会

2024年8月、私が参加してから10ヶ月が経った頃、新しいメンバーの山田さん（48歳）が参加されました。

佐藤会長から「田中さん、山田さんの最初のお手伝いをお願いします」と言われた時は、正直驚きました。「私がもう人に教えられるレベルに？」

しかし、山田さんと接する中で、自分の成長を実感することができました。

後輩指導での気づき

• 1年前の自分と同じ不安を抱えている
• 基本的なことは説明できるようになっている
• 失敗の経験が相手を安心させる材料になる
• 教えることで自分の理解も深まる

山田さんに最初の針金かけを教えた時、「田中さんの説明はとても分かりやすいです」と言われた時の嬉しさは格別でした。

初めての展示会出品

2024年10月、東京盆栽大観展に愛好会として出品することになり、私の松も展示させていただくことになりました。

人生初の展示会出品。緊張しましたが、多くの方に作品を見ていただける機会に感謝の気持ちでいっぱいでした。

展示会での反応

• 「初心者作品とは思えない完成度」
• 「基本がしっかりしている」
• 「今後の成長が楽しみ」

プロの作品と並べられるのは恐縮でしたが、1年前には想像もできなかった体験でした。

1年後の変化：数字で見る成長

2024年10月14日、愛好会参加からちょうど1年が経ちました。この1年間の変化を振り返ってみます。

項目	参加前	1年後
所有作品数	1個	4個
習得技術	水やりのみ	植え替え、剪定、針金かけ、施肥
盆栽仲間	0人	15人
月の勉強時間	0時間	20時間
年間イベント参加	0回	8回

第6章：愛好会参加で得られたもの

技術面での成長

1年間で習得できた技術は想像以上でした。

基本技術の習得

• 植え替え（土の配合、根の処理、植え付け方法）
• 剪定（枝の選択、切り方、タイミング）
• 針金かけ（太さの選択、巻き方、外し方）
• 施肥（種類、量、時期）
• 病害虫対策（予防、発見、処置）

応用技術への挑戦

• 樹形作りの基本構想
• 季節に応じた管理調整
• 展示会での飾り方
• 作品撮影のコツ

独学では絶対に身につけられなかった技術ばかりです。

人間関係の広がり

愛好会参加前は趣味を共有できる友人がいませんでしたが、今では盆栽を通じた豊かな人間関係があります。

愛好会内での関係

• 佐藤会長：盆栽の師匠であり、人生の先輩
• 田村さん：園芸全般のアドバイザー
• 山本さん：科学的アプローチの指導者
• 高橋さん：同世代の良き相談相手
• 新人の山田さん：教える立場での新たな学び

愛好会外での繋がり

• 近所の盆栽園の山田さん：材料調達の相談相手
• 他の愛好会メンバー：イベントでの交流
• 盆栽関連のSNSグループ：情報交換

生活の質の向上

盆栽愛好会への参加は、私の生活全体にプラスの影響をもたらしました。

精神面での変化

• ストレス解消の手段が増えた
• 集中力が向上した
• 忍耐力がついた
• 自然への関心が高まった

生活リズムの改善

• 早起きの習慣がついた（水やりのため）
• 規則正しい生活になった
• 週末の過ごし方が充実した
• 季節の変化に敏感になった

第7章：これから参加を考えている方へのアドバイス

参加前の不安への回答

1年前の自分と同じように、参加を迷っている方に向けてアドバイスをお伝えします。

Q: 全くの初心者でも参加できますか？
A: 問題ありません。私も含め、ほとんどの方が初心者から始めています。基礎から丁寧に教えてもらえます。

Q: 年齢層の違いが心配です
A: 確かに年配の方が多いですが、人生経験豊富な方々から学ぶことはとても多いです。世代を超えた交流を楽しめます。

Q: 費用が心配です
A: 月会費（1000円程度）以外は、自分のペースで道具や材料を購入すれば大丈夫です。最初は貸出道具も利用できます。

Q: 継続できるか不安です
A: 無理に毎回参加する必要はありません。自分のペースで参加すれば、自然と続けられます。

参加する時の心構え

積極的に質問しましょう
分からないことは遠慮なく聞いてください。皆さん喜んで教えてくださいます。

失敗を恐れないでください
私のように枝を切り間違えても、温かく受け入れてもらえます。失敗も学びの一部です。

完璧を求めすぎないでください
盆栽は長い時間をかけて育てるもの。急がず、楽しみながら続けることが大切です。

参加後の楽しみ方

まとめ：愛好会参加で変わった私の人生

あの日、公民館の前で30分間うろうろしていた不安だらけの自分を思い出すと、今の自分の変化に驚きます。

得られた最も大きなもの
それは「仲間」です。年齢も職業も様々な方々と、盆栽という共通の趣味を通じて深いつながりを築くことができました。

技術の向上よりも大切なこと
もちろん技術も大幅に向上しましたが、それよりも大切なのは「学び続ける楽しさ」を知ったことです。70歳を超えた佐藤会長が今でも新しい技術に挑戦する姿を見て、生涯学習の素晴らしさを実感しています。

これから参加を考えている方へ
もしあなたが今、参加を迷っているなら、私からお伝えしたいことがあります。

「勇気を出して、その一歩を踏み出してください」

私のように2ヶ月も悩む必要はありません。愛好会の皆さんは、きっとあなたを温かく迎え入れてくださるはずです。

1年前には想像もできなかった充実した盆栽ライフが、きっとあなたを待っています。

関連イベント情報

盆栽愛好会や体験教室の最新情報については、イベントカレンダーをご確認ください。全国各地で開催される様々なコミュニティイベントの情報を随時更新しています。あなたにピッタリの愛好会がきっと見つかるはずです。